日々の臨床 4月30日日曜日

神経・精神・運動器

 

テーマ:レビー小体型認知症

 

 

<精神科の先生からいただいたお薬を飲んだら、立ちくらみがしてわけがわからなくなった>という、

 

こちらにとっても訳の分からないことをおっしゃる高齢男性。

 

なぜ精神科の先生と相談しないのか、とお尋ねすると、

 

<何か言うたびにお薬が増えるので困る>のだそうでした。

 

また、精神科では何を診ていただいているのかお尋ねすると

 

<内科の先生に心療内科を受診するように言われたから>とのことでした。

 

 

家族から、さらに詳しく聞き取ると、

 

どうやらもともとパーキンソン病の症状があって神経内科を受診していたが、

 

幻視(人、小動物、虫など)や、妄想などの精神症状、夢遊病などが現れたため

 

神経内科の先生の手に負えなくなったためだとのことでした。

 

精神科の先生の処方薬は、通常の処方量より、かなり控えめであったため、

 

まず薬に対する過敏性を疑いました。

 

 

まず、神経内科の先生は、この患者さんを

 

認知症合併のパーキンソン病として治療を進めていたことから出発します。

 

CTやMRIは正常でしたが、MIBG心筋シンンチグラフィで心臓交感神経の脱神経所見があったため、

 

パーキンソン病の早期診断ができました」との説明を受けたようです。

 

画像検査のフィルムのコピーを持参されていたので、

 

私が改めてMRIを読影してみると、わずかですが海馬という記憶に関する脳領域の萎縮と、

 

SPECTでは後頭葉皮質の血流・代謝低下を認めたため、

 

レビー小体型認知症だったのではないかと考えました。

 

 

レビー小体型認知症であると仮定すると、

 

MIBG心筋シンンチグラフィで心臓交感神経の脱神経所見をふくめて、

 

これらの画像診断の所見と矛盾しません。

 

また、この病気は、抗精神病薬に対する過敏性が問題になっています。

 

 

この患者さんに処方されている向精神薬を中止すると、症状は軽快しました。

 

しかし、十分な回復が得られなかったため、漢方薬の抑肝散を処方しました。

 

すると、4週後には妄想、幻覚、興奮、うつ、不安、無感心、易刺激性、異常行動などが顕著に改善しました。

 

その後は、紹介先の某大学病院の神経内科から、コリンエステラーゼ阻害薬のみの処方を受けています。

 

その一方で、心身のメインテナンスのため水氣道®をはじめていただいています。

 

姿勢が改善し、表情が明るくなり、動作も以前よりかなりスムーズになっています。