日々の臨床 4月28日金曜日

心臓・脈管 / ・泌尿器の病気

 

テーマ:薬剤による腎障害

 

 

厚生労働省が医薬品による急性腎不全の診断チャートをまとめ、

 

「医療関係者の皆様へ」と通知している内容の中から、

 

《 早期発見と早期対応および予防のポイント》の部分を抜粋して要点をまとめてみました。

 

 

〇薬剤性腎不全が疑われる場合には、原因医薬品を推定し、

 

腎臓の障害部位を診断し、適切な治療を行う必要がある。

 

⇒まず、薬剤性腎不全という病気の存在をまず知ること。次に、これを疑ってみること。

 

 

〇急性腎不全は、まだ確定した定義は存在しないが、

 

「血清クレアチニン値が前値の150%以上に上昇する」を基本と考えると簡潔である。

 

もちろん、クレアチニ ン値が上昇傾向にあり、

 

前値の 150%以上に達する可能性が大きい場合も急性腎不全と考えるのが早期診断のポイントである。

 

⇒急性腎不全を起こし得る薬剤が存在します。

 

 

〇診断方法:基本的に血清クレアチニン値で診断するので、

 

定期的に血液検査をする必要があるが、その間隔は医薬品により異なる。

 

造影剤使用時には使用後 12 時間から 24 時間以内に 1 回目を、上昇傾向があればその後連日行う必要がある。

 

⇒他の病院で造影剤を使用する検査を受ける場合には、あらかじめご相談ください。

 

造影剤による腎障害は、高齢者で起こりやすく、

 

また腎機能低下、脱水、慢性腎臓病を合併する糖尿病では起こりやすいので注意が必要です。

 

 

〇代表的な原因薬剤:これらの薬剤は高円寺南診療所でも処方しています。

 

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)⇒いわゆる鎮痛剤や解熱剤

 

アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)

 

⇒いずれも降圧剤

 

これらの使用開始時には 2~4 週間隔が適切と考えられる。

 

NSAIDs、ACEI、ARBによる腎前性急性腎不全は有効循環血液量の減少が大きな危険因子である。

 

有効循環血液量の減少の最も多い原因が脱水である。

 

 

どの医薬品による急性腎不全でも、危険因子として、

 

高齢・もともとの腎機 能低下・脱水・発熱などがある。

 

なかでも脱水予防は医療行為によりコントロールできる最大な因子である。

 

⇒日頃から、水分をしっかり摂取する習慣を維持しましょう。

 

 

また、高円寺南診療所では、リウマチの患者さんの多くに抗リウマチ薬として、

 

メトトレキサートを処方しています。

 

メトトレキサートは酸性尿の環境で尿腔に析出しやすいため、

 

定期的に尿検査をして尿のpHをチェックしています。

 

薬剤性腎障害の予防には尿のアルカリ化が有用なため、

 

必要に応じて尿アルカリ化剤を処方します。

 

 

〇診断:非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)による薬剤性腎炎の診断は、

 

薬剤中止後1~2週で腎障害が軽快しない場合は、

 

確定診断による治療方針決定のため腎生検が有用です。