日々の臨床 4月24日月曜日 

中毒・物理的原因による疾患、救急医学

 

テーマ:病原性大腸菌食中毒

 

 

<下痢、腹痛、風邪様症状>を訴える患者さんは、今年の正月明けからしばらく続きました。

 

そうした患者さんの中で、下痢から症状が始まり、

 

すぐにコレラのような頻回の水様性下痢となり、

 

強い腹痛と血便が見られることがあります。

 

2日以内で改善しても腹痛が激しくなり、血便を来すことがあります。

 

血便は血液のみのようになり腸粘膜が混在することもあります。

 

 

これは病原性大腸菌食中毒でみられる症状です。

 

輸入腸管感染症の原因菌として最も多いのがこれです。

 

潜伏期はふつう1~3日です。

 

病原性大腸菌は種類も多く、健康な人でも菌を持っていることがあります(健康保菌者)

 

全ての病原性大腸菌が危険というわけではありませんが、

 

O-157のようなベロ毒素を出すタイプは重症な合併症を併発することがあり、要注意です。

 

 

普通の食中毒は菌が百万個以上体内に入らないと発症しませんが、

 

病原性大腸菌O-157は、わずか100~1000個の菌でも発症します。

 

人~人の感染もありますので早期に適切な処置が必要です。

 



毒素原性大腸菌ETECは、小腸上皮吸着能と毒素産生能を有し、

 

コレラ様の激しい下痢でおさまります。

 

発展途上国を旅行中の人がかかりやすいです。

 

基本的に軽症であれば検査は行われません。

 

また、一般検査室での毒素検査は、保険状も認められていないので、

 

症状に対する治療が優先され、輸液(点滴)が行われます。

 

 

腸管出血性大腸菌(ベロ毒素産生性大腸菌)EHECは

 

感染型(生体内毒素産生型)の食中毒で、潜伏期は、1~9日、

 

症状は、ベロ毒素が原因で、主に盲腸や結腸に炎症性変化を来します。

 

感染源は家畜、とくに牛です。

 

牛の糞により二次的に汚染された食材によることもあります。

 

ベロ毒素は血管内皮細胞における蛋白合成を阻害することによって細胞毒性を発揮します。

 

そのため水溶性下痢で収まらずに、

 

1~2日で激しい水様性血便と腹痛をともなう出血性大腸炎を来します。

 

現在、要注意とされている病原性大腸菌は、O-157、O-26、O-111、です。

 

他にO-74、O-91、O-103、O-121、O-145、O-161、O-165、なども

 

時にベロ毒素を出すことがあります。

 

その他のタイプでも稀にベロ毒素を出すことがありますので、

 

病原性大腸菌には油断禁物です。下痢がはじまって1週間後から、

 

溶血性貧血、血小板減少、急性腎不全などの溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症の合併が問題となります。

 

 

出血性大腸炎の場合、腹部超音波検査で、右側結腸壁の著しい肥厚を認めます。

 

下痢発症後早期に、抗菌薬を3~5日間投与することが治療のポイントになります。

 

 

【溶血性尿毒症症候群(HUS)】は、生命に関わるくらい重症ですが、

 

早期に治療すれば回復が早いです。発症早期は下痢しか症状がみられませんが、

 

下痢くらいと考えず早めに医療機関を受診しましょう。

 

特に血便が見られたら、いくら元気に見えても様子など見ることなく、すぐ受診しましょう。

 

 

腸管組織侵入性大腸菌EIECは、細菌性赤痢様(粘血便、腹痛、発熱など)の急性胃腸炎を来します。

 

糞便検査で診断し、輸液と抗菌薬で治療します。