日々の臨床 4月23日日曜日

神経・精神・運動器

 

テーマ:視神経脊髄炎(NMO

 

 

<最近、注意力が落ちて、人ごみの中で、他人にぶつかりやすくなった、頭痛も気になる>

 

という40過ぎの女性。更年期に差し掛かる年頃の女性の訴えは、実に様々で、ときに複雑です。

 

 

自律神経失調症とか更年期障害だとかの診断を受けているような患者さんの場合は、要注意だと思います。

 

詳しい問診が欠かせません。

 

 

患者さんは、<最近>、といいましたが、実は、<突然に、ある時期からずっと…>でした。

 

<他人にぶつかりやすくなった>のは注意力低下ではなく、

 

両側が見えにくい、見えないからでした。

 

痛みは、頭痛だけでなく目も痛むことを確認しました。

 

その他、ご本人は気づいていない、あるいは気にしていなかった症状、

 

両側の軽度の麻痺、失禁、自律神経障害症状もみられました。

 

たいていの患者さんは、自分が困っていることや心配している症状以外のことまでは気が回らないものです。

 

簡単に視野のチェックをしてみると、両側の耳側半盲が疑われたので、

 

眼科での精密検査を勧めたところ、果たして両耳側半盲で視神経炎があることがわかりました。

 

<最近、注意力が落ちて、人ごみの中で、他人にぶつかりやすくなった、頭痛も気になる>

 

という訴えのほとんどは、これで説明できるためか、眼科での検査はそこで終わった模様です。

 

 

しかし、それだけでは、両側の軽度の麻痺、失禁、自律神経障害症状などの説明ができません。

 

私は、視神経炎という診断をもとに、多発性硬化症を疑いました。

 

そこで脊髄の検査が必要だと判断し、関連病院に紹介して、頭部と脊椎のMRIと髄液検査を依頼しました。

 

 

検査結果:頭部MRIT2強調画像:視神経に高信号⇒視神経炎)

 

脊椎MRI頸椎に4椎体におよぶ病変⇒横断性脊髄炎)

 

髄液:異常なし

 

血液:血清抗AQP4抗体(NMO-IgG)陽性

 

診断:視神経脊髄炎(Devic病)

 

この病気は、主に視神経炎横断性脊髄炎を繰り返す炎症性脱髄性疾患です。

 

 

医学の進歩は日進月歩です。

 

この病気は、多発性硬化症の一病型と考えられていました

 

しかし、血清抗AQP4抗体(NMO-IgG)の特異性が高い、

 

髄液でのオリゴクローナルバンドが陰性など多発性硬化症とは異なる特徴も多いため、

 

現在では別の病気と考えるようになってきています。

 

この患者さんは、比較的早期の発見であったため、ステロイドパルス療法が良く効きました。