日々の臨床 4月14日 金曜日

 

 

心臓・脈管 / 腎・泌尿器の病気

テーマ:特定心筋症(続発性心筋症)

 

気が小さくて、些細なことにも不安で怯えてしまう人を指して<ノミの心臓>などということがありますが、スポーツ心臓ならいざしらず、心臓は大きければよいということはありません。

1日80~90g以上のエタノールを5年以上摂り続けた場合に、心不全になることがあります。私が診た患者さんは、動悸と息切れがひどいということで来院されました。胸を打診すると心臓が大きいことがわかりました。

すぐに胸部レントゲンで心臓の形態を確認し、左室拡大(左心室、つまりポンプの中心の部屋が病的に広がっている状態)であることを確認し、心臓超音波検査にて、心不全の診断を確定したことがあります。「あなたの心臓はだいぶ大きいです。」と伝えたところ、「最近、酒が心臓に沁みてきまサー」と答えたのが印象深いです。この方は昼間から酒臭いアルコール常習者で、閉口しましたが、アルコールが原因の心不全であること、禁酒で治せることを説明したら、半年ほどで心不全は見られなくなりました。初診の翌日から断酒したそうです。「そろそろ飲みたくなってきましたか」と尋ねると、「滅相もありませんヤ、肝臓の前に心の臓に来ちまうなんザ、縁起でもねエ、酒はオイラには毒だ。親父も酒飲みだったが、心臓でいってしまった。皆で大往生だなんていっていたが、とんでもねエ話だった。先生には一生感謝だ。恩に着るゼ。」江戸っ子を自慢にする気風の良い方は最近では珍しくなってきて寂しいです。診断名:アルコール性心筋症(拡張型心筋症タイプ)、結果:完治。

 

この種の心臓病の原因は、他に感染性(ウイルス、細菌など)、代謝性(栄養障害、ホルモン異常・アミロイドーシスなど)、全身性(膠原病、白血病、サルコイドーシスなど)、遺伝性・家族性(筋ジストロフィーなど)があります。