日々の臨床:4月4日 火曜日

血液・造血器の病気

 

テーマ:急性リンパ性白血病

 

 

 

高円寺南診療所は小児科を標榜していないので、いわゆる小児疾患の経験は乏しいです。

 

しかし、小児疾患といっても、小児のみの病気であるとは限らないため、内科医も無関心、不勉強では済みません。

 

小児の悪性腫瘍の中で最多である急性リンパ性白血病は、造血前駆細胞に生じた遺伝子異常が原因となります。

 

小児(2~5歳)と高齢者に二峰性のピークがあります。

 

成人でも年間10万人あたり約1人、東京の人口を1000万人とすると100人発生します。

 

これは無視できる数ではありません。

 

 

 

急性リンパ性白血病の症状は、頭痛や嘔吐、精神症状などに限られます。

 

精神症状は白血病細胞が中枢神経浸潤をきたしたためであり、

 

頭痛専門医資格にもチャレンジ中の心療内科専門医としては、

 

今後、遭遇の機会も少なくないと考えています。

 

 

 

よく対比される急性骨髄性白血病と違い、

 

それまでに血液の病気に罹ったことのないケースがほとんどであり、

 

血液の病気を疑うまでに至るのが大変だと思われます。

 

 

外来の診察室で、腫大したリンパ節を触診できれば重要な手掛りになりますが、

 

そのチャンスは少ないと思います。

 

 

 

診断の手掛かりは、まず疑うこと、疑うとは疑えること、つまり、知識が勝負となります。

 

しかし、幸い医師に知識があっても、患者さんの御理解とご協力がなければ、正しい診断に辿り着けません。

 

「頭痛と吐き気の症状だけ治してほしい、余分な検査は希望しない。」

 

などとおっしゃる患者様も最近では少なくありませんが、

 

私が必要だと判断する検査を余分な検査であると決めて掛るような御仁には、

 

そもそも信頼関係が成立していないのですから、

 

何を申し上げても無駄であることは30年におよぶ臨床経験からして確かだと思います。

 

 

 

さて、この病気ですが、小児の5年生存率が約80%なのに対して、

 

成人では30~50%で予後成績が悪いことが問題です。

 

予後成績を悪くする因子は、

 

① 完全寛解までの期間が長い,

 

② 白血球数が多い(30,000~50,000 / μL以上)、

 

③ 高年齢(30歳以上)、④Ph染色体【t(9:22)】の核型をもつ、とされています。

 

 

外来診療にて、患者さんの年齢はすぐに確認でき、

 

また血液検査をすれば、少なくとも白血球数は確認でき、

 

そこから適切かつ迅速な診断・治療手続きに入ることを申し上げておこうと思います。