今月のテーマ:全人的医療の実践
全人的医療とは、
1)特定の部位や疾患に限定せず、
2)患者の心理や社会的側面なども含めて幅広く考慮しながら、
3)個々人に合った総合的な疾病予防や診断・治療を行う医療。
でした。
今回は、上記のうち1)と2)についてコメントします。
1)は、医学の中核である内科学の本来あるべき姿勢です。
現在の内科医療は、たとえば日本内科学会は13学会を指定しています。
日本消化器病学会・日本肝臓学会・日本循環器学会・日本内分泌学会・
日本糖尿病学会・日本腎臓学会・日本呼吸器学会・日本血液学会・
日本神経学会・日本アレルギー学会・日本リウマチ学会・日本感染症学会・日本老年医学会
これらの専門領域の専門医のほとんどが、特定の部位や疾患に限定した診療をしているのが現状です。
以上のうちで、主に、日本アレルギー学会・日本リウマチ学会・
日本感染症学会・日本老年医学会の4学会は、臓器別でないという特徴があるため、
その観点からすれば、全人的医療を実践しやすい領域であると言えるかも知れません。
2)は、本来であれば、全ての臨床医に求められている条件のはずですが、
実際の医療ではなかなか実践されているとは言いがたいのが現状です。
患者の心理や社会的側面について考慮すべきなのは、
精神科に限らず、内科をはじめとするすべての身体各科の医療についても求められています。
とくに、内科医がこれを実践する環境になければ、《 全人医療 》の実現は困難となります。
患者の心理や社会的側面について考慮する内科が本来の<心療内科(心身医療内科)>なのですが、
<心療内科医(心理療法・心身医学療法を得意とする内科医>の意義と役割が正しく理解され、
多くの患者さんに貢献できなければ、《 全人的医療 》は、とうてい達成できないでしょう。