今月のテーマ「神経疾患の最新医療」
<パーキンソン病の治療薬>
パーキンソン病など神経変性疾患は、加齢依存性疾患が多いことから、
近年の超高齢社会の進展に伴って、多くの神経疾患では患者数が飛躍的に増加しています。
近年、神経疾患では疾患の原因となる異常タンパクが神経細胞から分泌されて
周囲の神経細胞を障害するというプリオン仮説が提唱されています。
実際に、パーキンソン病などでは移植した神経細胞にも
異常タンパクの蓄積が見られるとの報告もあります。
そこで、神経疾患に対する細胞治療を臨床応用していくためには、
使用する細胞の種類や移植方法および併用する治療法など、
今後検討すべき課題が多く残されています。
まずは、薬の種類が多く、副作用や禁忌もあり、
これを処方薬として使いこなしている医師は相当の頭脳と覚悟があるものと思います。
1)ドパミン前駆物質(+DCI)最も有効
…ドパミン補充(DCIは末梢のレボドパを代謝するDDCを阻害)
禁忌:閉塞隅角緑内障/ウェアリング・オフ,ジスキネジアを起こしやすい
2)ドパミンアゴニスト 70~75歳以下、認知症のない早期例に
…ドパミン受容体に結合し、ドパミン用作用
禁忌:麦角系は心臓過敏症、非麦角系は妊婦
3)COMT阻害薬 レボドパによるウェアリング・オフを抑制
…末梢でレボドパを代謝するCOMT阻害
禁忌:悪性症候群、横紋筋融解症
4)MAO-B阻害薬 レボドパの効果を高める
…シナプス間隙のMAO-B阻害、ドパミン濃度上昇
禁忌:統合失調症、抗うつ薬使用者
5)抗コリン薬 薬剤性パーキンソン症候群、軽症例に
…ムスカリン受容体遮断、アセチルコリン作用抑制
禁忌:緑内障、重症筋無力症、尿路閉塞性疾患
6)ドパミン遊離促進薬 ジスキネジアに有効
…グルタミン酸(NMDA)受容体拮抗作用、線条体ドパミン放出促進
禁忌:妊婦、授乳婦、腎障害(中等度以上)
7)レボドパ賦活薬 振戦、ウェアリング・オフに有効
…ドパミン合成促進、MAO-B阻害作用
禁忌:妊婦
8)ノルアドレナリン前駆物質 すくみ足、起立性低血圧に有効
…不足したノルアドレナリンを補充
禁忌:閉塞隅角緑内障、ハロゲン含有吸入麻酔薬、妊婦
9)アデノシン(A₂A)受容体拮抗薬 ウェアリング・オフに有効
…A₂A受容体を遮断し、淡蒼球外節におけるGABA過剰を改善
禁忌:肝障害(重度)、妊婦
ウェアリング・オフ現象とは、薬の持続時間が短くなり、
薬の効果が切れてくると症状が悪くなる現象です。
ジスキネジアは、抗パーキンソン病薬の服用に伴って起きる不随意運動の総称で、
自分の意志に関わりなく身体が動いてしまう症状です。
ジスキネジアは高齢者よりも若年性パーキンソン病患者に現れやすいです。
若年性のパーキンソン病患者では 四肢が勝手に動いてしまうことが多いが、
高齢者では 「口舌ジスキネジア」で始まり、四肢の不随意運動へと進行していく例が多いです。
L-ドーパの内服開始後 だいたい3~5年で現れるようになることが多く、
約半数の患者がこれを経験するようになるようです。
悪性症候群と横紋筋融解症
悪性症候群とは 精神神経用薬(主に抗精神病薬)により引き起こされる副作用です。
高熱・ 発汗、意識のくもり、錐体外路症状(手足の震えや身体のこわばり、
言葉の 話しづらさやよだれ、食べ物や水分の飲み込みにくさなど)、
自律神経症状 (頻脈や頻呼吸、血圧の上昇など)、横紋筋融解症
(筋肉組織の障害:筋肉 の傷みなど)などの症状がみられます。
悪性症候群は、多くは急激な症状の変化を示します。
抗精神病薬などを服用後、急な高熱や発汗、神経系の症状などが認められる場合は、
悪性症候群発症の可能性を考慮する必要があります。
悪性症候群は、放置すると重篤な転帰をたどることもありますので、迅速な対応が必要です。
あらゆる抗精神病薬は、悪性症候群を引き起こす可能性があり、
ほかにも 抗うつ薬、抗不安薬、パーキンソン病治療薬、制吐剤などの
消化機能調整薬 による発症が知られています。
また、パーキンソン病治療薬の減薬による発症も報告され、
パーキンソン病治療の難しさの一端を物語っています。