プライマリケア・救急・心療内科 Vol.1

今月のテーマ<心療内科の周辺① 精神神経科>

 

 

膨大な脳・神経・筋疾患を扱う診療科としては、心療内科以前に、

 

神経内科、精神科、脳神経外科、整形外科が挙げられます。

 

 

脳神経外科と整形外科では、これらの疾患のうち脳腫瘍、

 

くも膜下出血、脊椎病変、手根管症候群など外科手術を要する疾患を扱います。

 

 

精神科では神経細胞死など器質的病変が見られないいわゆる精神疾患、

 

すなわち統合失調症、うつ病、躁病、神経症(身体表現性障害)などを扱います。

 

 

これに対して、心療内科は、

 

主に心理的背景をもつ身体症状(心身症)を扱うことになっています。

 

 

しかし、目の前の患者さんの病気の原因や発症に至るまでの経過、その後の症状経過に

 

どれだけ心理的背景が関与しているのかという評価は決して容易ではありません。

 

 

来院時に「人間関係のストレスで・・・悩んでいます。」

 

と自ら語ることができる患者さんは、心身症というよりは神経症の傾向があり、

 

精神神経科領域である場合が少なくありません。

 

 

ただし、御自分の身体症状や体の病気に気づいていない場合があり、

 

内科医である心療内科専門医として、見落としのないように診療をします。

 

 

このようなタイプに対して、「最近、頭痛やめまいや耳鳴りがあって、

 

肩こりもひどく、動悸や息切れがあり、下痢をしたり便秘になったり、

 

湿疹も増え、・・・それから、生理(月経)も滞りがち・・・」

 

などと、多数の複雑な身体症状がオンパレードする割には、

 

ご自分自身の心の在り方をはじめ生活や仕事の背景に言及がないような方もいらっしゃいます。

 

こうしたタイプに心身症傾向がみられることが多いです。

 

 

すでに多数の臨床科を受診し、毎回、異常なしとの見立てを受けて困っている方たちなのです。

 

 

このようなタイプの方は、担当医から「一度、心療内科を受診されたらいかがでしょうか」

 

とのアドヴァイスを受けることが多く、

 

そのほとんどが、心療内科を標榜する精神神経科医を受診するため、

 

心療内科医療の現場は、甚だしく混乱している、という実感があります。

 

 

思えば、平成元年に高円寺南診療所を開設した際は、

 

内科・皮膚科・外科を標榜していましたが、

 

「心療内科」の標榜は一般に認められていませんでした。

 

 

そのころから既に多数の心身症の患者さんを診療していました。

 

 

「心療内科」の標榜が全国的に可能になるのは、平成8年に至ってからのことでした。

 

 

それからというもの、内科疾患や心身症より神経症やうつ病の患者さんが増加し、

 

初期の統合失調症の方までが来院されるようになったのは、宿命だったのかもしれません。