神経・アレルギー・膠原病内科 Vol.5

今月のテーマ「神経疾患の最新医療」

 

 

<神経疾患における免疫修飾療法>

 

 

神経疾患には未だ根本的な疾患修飾治療が確立されていない難病がきわめて多く、

 

満足できる状態ではありません。

 

 

その理由の一つは、神経細胞が既に分化し終わり、分裂を停止した状態にあって、

 

一旦障害されると、極めて再生し難いということが挙げられます。

 

 

たとえば、認知症の治療薬開発戦略は,

 

失われた神経機能を補い認知症症状を改善させる症候改善療法

 

認知症の原因疾患の病理学的変化の進行を抑制する疾患修飾療法

 

損傷を受けた神経細胞を修復し再生を促す神経修復・再生療法の3つに大別されます。

 

 

現在日本で処方可能な抗認知症薬剤はいずれも症候改善薬であり,

 

次世代の認知症治療として期待を集めているのが疾患修飾薬です。

 

 

疾患修飾療法のうち、免疫機構による免疫修飾療法です。

 

 

対象となるのは自己免疫疾患で、ギラン・バレー症候群/フィッシャー症候群、

 

慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)、重症筋無力症などです。

 

 

血液浄化療法…体液の是正、病因物質の除去を目的とする治療法で血液透析をはじめ、

 

血漿交換、吸着療法などの体外循環治療です。

 

 

免疫グロブリン大量静注療法…Fc活性をもつ免疫グロブリンIgGを静脈投与する治療法です。

 

なお免疫グロブリンのFc領域は、補体の活性化や抗体依存性細胞傷害作用など、

 

免疫反応の媒介となる活性を持っています。

 

 

ステロイドパルス療法…1グラムのステロイドを3日間連続で点滴することを1クールとして

 

疾患によって1~3クール行う治療法です。

 

 

免疫グロブリンによる治療メカニズムにはいくつかの仮説があります。

 

 

Fcγ受容体を介した機序

 

大量投与されたIgGのFc部分によってFcγ受容体が阻害されマクロファージの活性化が阻害される)

 

補体を介する機序(C3bといった補体成分とIgGが結合することでC5b-C9複合体の生成が減少する)

 

抗イディオタイプ抗体による自己抗体の制御

 

抗イディオタイプ抗体によって自己抗体が中和される)

 

炎症性サイトカインの制御

 

IL-1αやIL-6といった炎症性サイトカインに対する中和抗体が含まれている)

 

T細胞の制御(サイトカインバランスに働きかけて自己免疫性疾患を調節する)。