シリーズ 末期医療のメール相談 Vol.2

<15年前の振り返りと返信>

 

 

B様

 

メッセージを拝読いたしました。

 

Aさんが『肺がんでステージ4。放射線療法の後、

 

抗がん剤の効き具合や副作用によっては、ホスピスに移る可能性あり』、

 

とのこと了解いたしました。

 

 

残念ながら、漢方薬の処方に関しては、

 

私には判断材料も経験も不足しており、

 

また他院入院中の患者さんに対する処方の権限もありません。

 

 

実際に、私は意識が明瞭でない方に漢方薬を処方した経験はございません。

 

 

一般的に、現在想定されるAさんの状態では、

 

免疫力が極度に低下している可能性があります。

 

漢方薬投与により、たとえば間質性肺炎などの

 

重大な副作用を引きおこすようなことも

 

稀ならず発生しています。

 

 

がんの痛み、抗がん剤の副作用の緩和のためには、

 

より信頼性があり妥当性もある標準的方法が他にあると思います。

 

 

主治医のC先生と相談してみたらいかがでしょうか。

 

 

かつて「Aさんと親身に対応していただいた」と私のことを思い出してくだいまして、恐縮に存じます。

 

 

しかし、禁煙のお勧めと、継続通院の必要性を拒否されたときには、

 

率直に申し上げて医師として無力感を覚えたことは申し上げておきましょう。

 

 

それにしても、私が最も恐れていたこと、それがまさに現実となってしまい、とても残念です。

 

 

Aさんを引き留めておく医師としての力や人間的な魅力が、

 

もう少し私に備わっていれば、と悔やまれてなりません。

 

 

(私が「水氣道」や「臨床聖楽法」を着想し、これまで続けてこられたのも、

 

Aさんをはじめとする患者の皆様に対する医師としての無力感や、

 

そうした皆様の御家族の悩みや苦しみ無念な思いを多数承るなかで

 

標準的な医療の限界をひしひしと感じ続けてきたからに他なりません。)

 

 

そうした活動を続けてきた中で、ようやく私が悟りつつあることをお伝えできれば、と存じます。

 

 

それは・・・

 

『相手のために何をすべきか、ということより、

 

そうした相手の前で、自分自身がどうあるべきか、

 

ということを大切にした方が良いこともあるのでは…』

 

ということです。

 

 

Aさんの今からの段階は、それがより意味を持ってくるように感じられます。

 

 

ですから私にできることは、AさんとBさん、

 

お二人のそれぞれのご多幸を祈るのみです。

 

 

 

PS:最近、同じようなお問い合わせが増えております。

 

もし、差支えがないようでしたら、匿名で、

 

個人が特定されないような形で

 

高円寺南診療所のHPの「新着情報」

 

に掲載させていただけないでしょうか。

 

少しでも多くの方に対して、何らかの支えになれば、

 

と願う次第です。

 

 

飯嶋正広