循環器・腎臓・血液内科 Vol.4

今月のテーマ<循環器の特定内科診療>

 

 

「急性心不全」

 

 

高血圧は放置しておくと心不全を招くことがあります。以前から高血圧を指摘され、

 

しかも「心臓が大きくなっている(心拡大)」と注意を受けたとすれば、

 

それは確実に心不全へ向かっています。

 

 

多忙を誇る頑固な喫煙者のケアはなかなか骨が折れます。

 

 

心不全には左心不全と右心不全とがありますが、両者が合併すると両心不全をきたします。

 

 

多様な症状のために、心臓が原因であることに気づかず、

 

また喫煙の悪影響を認めようとしない方がいらっしゃいます。

 

禁煙に言及しない各科を受診した挙句、改善を見込めないため、医療不信となり

 

不機嫌な面持ちで高円寺南診療所を受診される方は少なくありません。

 

 

 

<症例報告>60代男性。「息切れと下肢のむくみが気になって来院。

 

 

問診:2年前、耳鼻咽喉科で蓄膿症の手術を受けたときに血圧190/120mmHgと

 

心拡大を指摘されたが、多忙を理由に未治療であった。

 

1か月前から下肢の浮腫みがひどくなってきた。

 

 

問診票より:たばこ40本/日を40年間、現在も喫煙中。禁煙に関心なし。

 

睡眠時間は1日5時間、週末は寝だめ。

 

身長165㎝、体重78㎏。体温36.0℃、呼吸数20/分、脈不整なし。

 

血圧190/130mmHg、意識は清明。

 

 

視診:大腿から足背にかけての顕著なむくみ、触診:肝腫大

 

 

聴診:両側頚動脈に血管雑音、胸背下部に粗い水泡音、腹部血管雑音

 

 

検査:尿たんぱく2+、胸部レントゲン(心拡大、肺うっ血)

 

 

心電図(高血圧による左心房や左心室への負担、左心室の壁が厚くなっていることを示す所見)

 

 

診断:高血圧症+両心不全⇒急性心不全

 

<息切れや、肺の水泡音は左心不全の徴候です。>   

 

<下肢の浮腫や肝臓の腫れは右心不全の徴候です。> 

 

 

転機:入院を頑なに拒むため、禁煙を絶対条件として、外来診療をはじめました。

 

1ヶ月後に完全禁煙を達成し、毎日最低6時間半の睡眠を確保、

 

その後、半年間をかけて血圧も徐々に正常化しはじめ浮腫みも目立たなくなりました。

 

しかし、データの改善を喜んだ翌日から喫煙を再開し、薬の内服を中断し、

 

自宅の備え付け自転車で運動最中に死亡された模様です。

 

死後数時間を経て家族に発見されたそうです。