呼吸器・感染症内科 Vol.4

今月のテーマ<呼吸器の特定内科診療>

 

 

急性呼吸窮迫症候群

 

 

30歳になったばかりビジネスエリートの男性。

 

「息が苦しい」とのことで来院。

 

 

お話を伺うと、「朝出勤時に交通事故に遭い、胸を強く打撲したが、

 

会社に顔を出さなければならないので部下に指示を与えながら、

 

医務室で休んでいました。」とのことでした。

 

 

血圧124/80mmHg、脈拍98/分、脈不整なし。

 

経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)88%(⇒低酸素血症)

 

心電図:異常なし

 

胸部レントゲン検査:骨折なし。左右両側の肺にすりガラスのような影

 

(⇒急性肺傷害、成人呼吸窮迫症候群の疑)。

 

 

臨床判断:まず交通事故による病態を疑い、肋骨骨折などを疑いました。

 

しかし、骨折を認めず、肺の障害を認めました。

 

また、心臓には異常を認めませんでした。

 

緊急の事態であるため、予め手配していた救急病院へ、

 

奥様が運転する自家用車で向かっていただきました。

 

 

後日譚:救急外来に到着するや否や血液の混じった泡状の痰(血性泡沫状喀痰)を吐き、

 

肺挫傷の存在が明らかになったとのことでした。

 

即座に非侵襲的陽圧換気を始め、一命を取り止めたとのことです。

 

その後の経過は不明です。