医学会ダイジェスト 日本頭痛学会

高円寺南診療所は、日常診療において、様々な「痛み」に取り組んできました。

 

 

先月「痛風」認定医試験を受験して一段落しましたが、

 

今月は「頭痛」専門医の研修プログラムに取り組んでいます。

 

 

外来診療において、「頭痛」は最も多い症状です。

 

そのほとんどが、筋緊張性頭痛や片頭痛などの一次性頭痛と呼ばれるものですが、

 

他の慢性疼痛と同様に、長期化した頭痛(慢性頭痛)は大きな問題になっています。

 

 

ところで、巷には神経内科や脳神経外科の看板は珍しくないのに、

 

なぜ今頃になって「頭痛」専門医を養成しなくてはならないのでしょうか。

 

 

その理由をいくつか挙げることができます。

 

第一に、「頭痛」はもっともありふれた症状なので、患者数が多いため。

 

 

第二に、「頭痛」があっても、どこで診てもらったら良いかわからないために

 

受診しない方が少なくないため。

 

 

第三に、たとえば脳神経外科等を受診しても頭部のCTに異常がなく、

 

納得のいく説明や治療を受けることができなかった経験があるため。

 

 

第四に、鎮痛剤などの市販薬による薬物乱用頭痛に陥っている例が少なくないため。

 

 

第五に、頭部CT(コンピューター断層撮影法)装置がなければ

 

「頭痛」外来はできないと考える

 

医師(かつてのドクトル飯嶋も!)や患者が圧倒的に多いため。

 

 

特に最後(第五)は大問題だとおもわれます。

 

なぜならば、頭痛は主観的な症状であり、

 

圧倒的多数の頭痛の症例は画像検査では原因が発見できないからです。

 

 

しかも、国際頭痛学会の考え方によれば画像診断が必要な場合は

 

CTではなくMRI(核磁気共鳴画像法)や

 

MRA(磁気共鳴血管造影)の優先が推奨されています。

 

 

ですから、CTの設備の有無ということは、

 

頭痛診療において決定的な前提条件でないことがわかります。

 

 

またMRIやMRA検査を実施できる医療機関は限られています。

 

 

 

そこで、さっそく昨日の日曜日(7月10日)、

 

盛岡で開催の日本頭痛学会主催のマスター・スクールに出席してきました。

 

広いホールは所狭しと、受講者のドクターがぎっしりと机を並べておりました。

 

 

 

プログラム委員長の寺山靖夫先生(岩手医大神経内科・老年科)のご挨拶文が、

 

この研修会の趣旨を端的に説明しています。

 

 

主観的な訴えである「頭痛」を科学的に具現化し標準化することにより、

 

・・・略・・・

 

それをきっかけとして「頭痛」に対する社会の認識が深まり、

 

頭痛に係わる医師、医療関係者、研究者が増えてきました。

 

本会の目的は、ともに頭痛を科学し、

 

国際レベルの診療と研究が行える専門医を育成することにあります。」

 

 

この研修プログラムが良くできているのは、単に講習会に出席するだけでなく、

 

研修後の7月下旬にテスト問題が出題されそれを受験するようになっていることです。

 

そして、それに合格しないと『頭痛専門医』受験資格が得られません。

 

 

頭痛専門医の資格の有無よりも、

 

頭痛外来を高水準で診療するための目安が得られるということは、

 

日常診療において大きな意味があると思います。