循環器・腎臓・血液内科Vol.5

今月のテーマ<腎臓の特定内科診療>

 

「急速進行性糸球体腎炎」②

 

 

症例:60台男性。「カゼ」との自己診断とともに、

 

「風邪薬が欲しい」とおっしゃった方<続き>

 

 

超音波検査では腎臓の萎縮などの異常は認めませんでした。

 

その旨をご本人に告げると

 

「異常がないのに、検査代を取るのか。納得がいかない。」

 

とおっしゃいました。

 

 

腎臓の萎縮は原発性糸球体腎炎による慢性腎不全で認めることが多いため、

 

この症例は急性腎不全であると判断し、

 

「紹介先の病院で精密検査が必要です。」

 

と申し上げたら、急にトーン・ダウンされて、

 

「ここで検査できないのか」とお尋ねになるので、

 

「残念ながら、できません。」とお答えしました。

 

 

以上より、この症例は、

 

たしかにカゼなどの先行感染症後に生じた腎障害であると推定しました。

 

臨床的には急速進行性腎炎症候群に一致します。

 

 

そこで、病理組織学検査が必要であるため、某大学の腎臓内科に紹介し、

 

精密検査を受けていただきました。

 

 

その結果、病理所見では、「半月体形成性糸球体腎炎および血管炎を認めます」

 

病理診断は「顕微鏡的多発血管炎」であり、

 

飯嶋先生のご指摘の通り、

 

急速進行性腎炎症候群の臨床診断に一致する所見でした、

 

とのお返事をいただきました。

 

 

 

患者さんからのご報告:

 

「大学病院の若い生意気な医者から、

 

『腎臓ばかりでなく、肺や胃腸の出血、

 

多発神経炎などの多臓器が障害を受けて危ない状況になるところでしたよ!』と脅かされた」

 

といってお怒りでした。

 

しかし、「カゼは万病の元。なるほどなあ」との独り言が印象的でした。

 

口は悪いが何となく憎めない方でした。