循環器・腎臓・血液内科Vol.2

今月のテーマ<腎臓の特定内科診療>

 

「難治性ネフローゼ症候群」①

 

50代男性。「足がむくみをとってほしい」とのことで来院。

 

問診によると「高血圧のため3年前から循環器内科で降圧薬の処方を受けている」

 

とのことでしたので、「循環器の担当の先生にご相談されましたか」と尋ねました。

 

すると、「3か月ごとの通院のたび担当医から『変わりありませんね?』と

 

尋ねられますが、返事する間もなく『いつものお薬お出ししておきますね。

 

コレステロールも高いので食事に気を付けてください。

 

とやられてしまうので、相談できませんでした。」とおっしゃる。

 

 

詳しくお尋ねすると

 

「3ヶ月前から、尿の泡立ちに気づき、

 

1ヶ月前から膝から下が浮腫み、体重が4.5㎏増加し、

 

重だるいです。」とのことでした。

 

 

 

「父は高血圧なのに酒タバコで早死にしたので、煙草は吸いません。

 

お酒は人付き合い程度でしたが、最近は控えています。

 

それから、コレステロールの少ない食事を採っています。

 

糖尿病にならないよう、ローカーボ(低炭水化物)ダイエットを励行しています。

 

1日1,800kcalです。」と御自分から説明してくださいました。

 

(高円寺南診療所では、必ず喫煙のことや食事のことを尋ねられることを、

 

事前に奥様から聴いていらしたそうです。)

 

 

 

体重の急増と下肢の浮腫(⇒心不全、肝不全、腎不全、栄養失調?)

 

血圧156/94mmHg(⇒コントロール不良の高血圧)、脈拍74/分、脈不整なし。

 

身長169㎝、体重76㎏(BMI=26.6:肥満度1)、体温36.6℃

 

尿検査:蛋白4+、糖(-)、尿潜血1+

 

(⇒軽度な血尿と著明な蛋白尿で、ネフローゼ症候群を疑う!)

 

 

診察所見:心音・呼吸音ともに異常なし。

 

腹部は平坦で柔らかい。肝・脾・腎を蝕知しない。

 

前脛骨部に浮腫(指圧すると凹んだまま)。

 

 

尿沈渣:尿赤血球5~10/1強視野、卵円形脂肪体、脂肪円柱、脂肪滴

 

血液生化学所見:総蛋白5.0g/dL、アルブミン2.4 g/dL、尿素窒素20mg/dL,

 

クレアチニン1.1mg/dL,尿酸6.8 mg/dL、総コレステロール330 mg/dL,

 

ナトリウム142 mg/dL、カリウム3.5 mg/dL、カルシウム8.3mg/dL、

 

リン2.9 mg/dL

 

 

臨床診断:高血圧症に合併したネフローゼ症候群

 

尿沈渣所見より、膜性腎症(疑い)とのことで

 

某大学病院腎臓内科に紹介し、腎生検を依頼しました。

 

 

<次回に続く>