医学会ダイジェスト リウマチ学会(第1日目)その2

妊娠・授乳期におけるリウマチ性疾患の診療 村島温子(国立成育医療研究センター)

 

 

 

はじめに:

関節リウマチは30~50代の女性に多い病気です。30歳以前に発症するケースも少なくありません。

 

そこで、抗リウマチ薬を使用中に妊娠の計画を立てたり、妊娠が判明したりした場合には、多くの女性が薬の中止を希望されるため、積極的に相談に応じてきました。

 

高円寺南診療所では、生物学的製剤のうちIgG製剤は胎盤移行性が高いため妊娠中は避けるだけでなく、妊娠可能年齢の女性には、なるべく生物学的製剤は使用せず、非生物学的製剤のうち奇形リスクや胎児毒性が疑われる抗リウマチ薬を慎重に減量する方針でサポートしています。

 

 

 

講演サマリー:

<総論>

慢性疾患患者の妊娠において重要なことは「原疾患の治療を優先すべきだが、妊娠を先送りしない」ということ。妊娠を計画するならば、疾患の管理と妊娠を両立させるような戦略をたてる。

 

 

 

<各論>

○関節リウマチ患者の妊娠においては妊孕性(にんようせい)の確保、妊娠中の寛解維持、良好な妊娠結果のためにも疾患活動性を抑えて妊娠に持っていくことが最重要

 

○年齢的に余裕がある場合には、早期治療で病気の進行を抑えてからドラッグフリーを目指して積極的な治療を行う。

 

○妊娠12週を過ぎると奇形のリスクはなくなる。

 

○胎盤が完成する15週以降は胎児毒性について注意が必要

 

○産後は高率に再燃するが、その際には母乳栄養が可能で即効性のある薬剤を選択する。

 

○なお全身性エリテマトーデスの例ですが、アザチオプリン、シクロスポリン、タクロリムスの催奇形性は否定的なので、ステロイド剤とこれらの免疫抑制剤の併用が選択肢となりうる。

 

○昨年から本邦でも使用可となったヒドロキシクロロキンを妊娠中に使用することで生じるリスクは否定的であるばかりか、ベネフィットさえある可能性がある。

 

 

 

コメント:

挙児を急がなくて良い場合には『早期治療で病気の進行を十分に抑えてからドラッグフリーを目指して積極的な治療を行う。』ことが疾患の管理と妊娠を両立させるという原則にマッチするのではないか、と考えています。